私が今までずっと使っていたものの中で一番古いものと言えば

たぶん、このオルゴールだと思います。


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これは私が3、4歳くらいの時に

父方の祖父の何かの記念日の日に親戚一同が集まり、

皆でお祝いしたあと

祖父からプレゼントされたものでした。



父方の祖父には子供が12人ほどいて

それぞれが結婚し、子供や孫もいて

お嫁さんなどもいれて親戚一同が集まると、

それはそれはたくさんの人数で

とてもにぎやかな会でした。




私の父は早くから東京に出て暮らしていたので

実家のある地元には

そうちょくちょくは帰れず

私も、おじいちゃんを見るのは

その時が初めてでした。




祖父はその昔、蒔絵師をやっていて

作業場にはいろいろ絵付けされた作品が置いてありました。

職人気質の頑固そうな人で、

ちょっと近寄りがたい印象がありました。



その時、祖父と何か会話を交わしたのかどうか

全く覚えていませんが

帰りがけに、その時みんなの中で一番小さかった私に

プレゼントされたのがこのオルゴール

祖父が絵付けしたものです。

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色とりどりのお花の咲く公園で

風船を配っているおばあさん。


黄い風船をもらった男の子。

その隣には、どの色の風船をもらおうか迷っている私。

蝶々や小鳥たちも遊びに来ました。

箱にたくさんのパンを詰めて

パン屋のお兄さんが横切ります。



子供心に、これはきっとよその国なんだわって思ってました。

今思えば、私がまだ見ぬ外国

憧れ
を抱いた最初のきっかけは

たぶん、このオルゴールからだったと思います。




その頃は漠然とした『異国』のものだったこの光景が

『フランス』だったというのがわかったのは小学校1年生の時。

図書館で見た国旗の本

あの見覚えのあるトリコロールの旗2-6-2が載っていて、

これはあの男の子が持っている国旗だと気がついたのです。



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中を開けると、どこか懐かしい異国の曲が鳴り始めます。

赤いベルベットをあしらった引き出しの中に

おもちゃの指輪やネックレスをいれたり、

大事にしていた折り紙や着せ替え人形やリボンなど、

その時、その時で入れるものは違いましたが

今までずっと大切にしてきました。



今、引き出しに入っているのは

子供の時に買ってもらったおもちゃの指輪


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マダムアレクサンダーのマザーグースのブローチと

ミニチュアコレクション。



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引き出しの中は、子供の時からお気に入りだった

パンダのシール。






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ところどころ、塗装が剥げてしまって

オルゴールのラと高いミがでなくなってしまったけれど

そこには懐かしいものや、大切な宝物

いつも入っていました。




大きくなるにつれて、この場面がフランスで

登場人物もフランス人だということはわかってきたのですが

いつまでもわからないことがあって、

それがずっと心に引っかかっていたのです。

このどこか哀愁をおびた異国情緒漂うオルゴールのメロディー




ちょっと音楽を知っていそうな大人に

このオルゴールを持って行って聴かせて

その曲名を聞くのですが

一度は耳にしたことはあるものの、

曲名まで正確に答えられる人はいませんでした。


いかにもフランスっぽくてお洒落で華やかで

でも少しどこかしら物悲しい異国のメロディー。

大きくなってからも、この曲名を知りたいという気持ちは

一層募るばかりでした。



ある時、ロンドンのHMVに入った時

たまたまこの曲が店内に流れていたのです。

私はあわてて、曲が流れている間に店員に

この曲の曲名を教えて欲しいと尋ねました。

でも、若い店員さんにはわかりませんでした。



がっかりして、ハロッズに入ったら

今度はヤマハの自動演奏のピアノがこの曲を弾いていたんです。

自動演奏ならどこかに曲名がインプットされているハズ...

そう思って、自動演奏が取り付けられているボックスを探して

そこに入っているMIDIデータを見て、

それをノートに記して

日本に帰ってからそのMIDIデーター元に問い合わせて

その曲が映画『赤い風車』の主題歌の

『ムーランルージュの唄』だということが

ようやくわかったのです。






その曲名を知りたいと思った時から30年余りも経っていましたが

ちょっとした偶然が重なって

ようやくこの曲名を知る事ができた時は

おおげさかも知れないけれど

神様からの贈り物だと思いました。




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ムーランルージュとはフランス語で『赤い風車』

パリのモンマルトンの丘にあるキャバレー

1889年にオープンされて以来

歌や踊りなどのショータイムが夜な夜な繰り広げられて来ました。

華やかな衣装で踊る情熱的なフレンチカンカン

見るもの全てを圧倒するそうです。


画家のロートレックをはじめ

世界中のブルジュワから愛された『赤い風車』。

もしもフランスに行く機会があったら

ムーランルージュにも行ってみたいな。