私の通っていた高校は、まわりを近代的なビルで囲まれた大都会の真ん中にあって

校門の前は6車線の大きな幹線道路が走り  

朝のラッシュ時にはJRや地下鉄の電車から押し出された

たくさんのサラリーマンの間を縫うようにして通学していました。

全学年の生徒が並びきれないような小さな小さな校庭と

窓を開けたらビルしか見えないような教室で 

3年間とても窮屈な思いをしていました。



唯一の楽しみは、駅の近くにあるビルの一角に

アンティークものの雑貨を扱っているお店があって

毎日そこをのぞいて行くことでした。

暗く照明を落としたショップの中には

見た事もない舶来品の数々。

重厚感漂うライティングデスクの上には

古い表紙の英語の本や、綺麗な装飾の施されたランプ。

18世紀の頃の世界地図やアンティークの時計やレース、

古い楽譜や絵はがきの数々........

そこはまるで古い時代にタイムスリップしたような

不思議な空間でした。



でもいくら素敵なものがあっても

都会の一等地にあるアンティークショップには

高校生のお小遣いで買えるような安いものはほとんどありませんでした。

唯一買えたのは、比較的安いアンティークの絵葉書などの紙物だけでしたが

その中で今でも大切にしているものがあります。

 

1800年代のファッション雑誌

『ル・ジュルナル・デ・ダーム・エ・ドモワゼル(Le Joumal des dames et des demoiselles)からの

リトグラフモード画。 

Ladies JouynalやVogueのようなファッション雑誌の先駆けとして毎月発行されたもので、

当時の女性達はこのようなファッション雑誌を参考に
 
ドレスを注文したり着こなしを研究したりしていたのでしょう。

精巧なタッチと淡い彩色が施され

当時の人々の暮らしぶりを想像しながら

 夢見心地で眺めていました。

現在このリトグラフモード画は1枚1枚バラバラにされて販売されており

世界中に熱心なコレクターさんがいるそうです。

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こちらの絵は1864年の1月のもの。

お部屋で2人の女性が談笑しています。


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右の女性の着ている光沢のある深い紫色のタフタのドレスはオーバースカートが付いていて

スカラップに形付けられたスカートの裾には刺繍が施されています。

首元にリボンで結ばれたレースのボネがとっても素敵!

左の女性は房のついた紐飾りの付いたタフタのドレスを着ています。

胸元には同じ紐飾りをあしらい、若い娘さんらしく

ふわっと膨らんだ袖が可愛い〜

黒いドレスに赤いアクセサリーや髪飾りを使うなんて

とってもお洒落です。

隣のお人形を抱く少女も小さいながら立派な貴婦人です。

この頃の少女は3-4歳の頃からすでにコルセットを着用させられていたそうですが

こんな小さな頃から矯正されているからこそ

大きくなってからもこの キュッと絞ったウエストスタイルが維持できるのですね。

この時代のスカートには鯨のひげや針金を輪にして重ねた

クリノリンと呼ばれる骨組みの下着を身につけていて

その土台の上にプリーツを取ったスカートを何枚かつけて

そしてオーバースカートをたくしあげて完成させるという

実に豪華で優雅なドレスが流行しました。

テーブルに飾られた金色の宝石箱やアンティークな椅子の背もたれなど

古き良き時代の生活ぶりを垣間みる事ができます。




こちらの絵は1866年のもの。

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左の女性の美しいデコルテにうっとり........

これから舞踏会へでも行くのでしょうか。


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3段重ねのタフタのイブニングドレスはとても可愛らしくて優雅です。

一番上の薔薇の飾りのあしらわれているバルーンスカートもとってもロマンチック。

乙女心をくすぐられます。

対する右の女性はきっちりとしたビロードのシンプルなドレスです。

2人の服装の対称がおもしろいです。

後ろ向きですが、小さな女の子のドレスも2段重ねになっていて

幾何学的な模様がアクセントとなっていてます。

縦ロールのポニーテールをなびかせてお部屋を駆けまわっています。

もしかしたら、右の女性は左の女性のおねえさんで、子供を連れて

妹の社交界デビューのアドバイスをしに実家へやって来た.....だなんて

勝手な妄想が膨らみます。

私もこんな時代に生まれたかったなぁ.....



こちらの絵は1870年のもの。

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この絵こそが、高校の時に通ったアンティーク屋さんで買った思い出の絵です。

スケッチブックにはさんで、授業中に何度も何度も見たので

少し端が切れてしまいましたが

汚い所を少しカットして装丁してもらいました。


 
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純白のベールに身を包んだ花嫁さん。

細かく描き込まれた手袋や髪飾りなどで

当時の生活ぶりがうかがえます。



1870年代にもなると、

クリノリンをしのばせたふわっとした広がった鳥籠のようなドレススタイルから

腰の後部だけを膨らませて強調している、バッスルと呼ばれるスタイルのドレスが流行しました。

きっとこの花嫁衣裳は当時の最先端のファッションモードだったのでしょうね。

腰にボリュームを持たせ裾へと流れるような曲線美をもたらすスタイルは

ため息がでるくらい女性らしさが表れています。

花嫁の介添えをしている左の女性も同じくバッスルスタイルのドレスを着ています。

顎でリボンを結ぶヘッドドレスも、時代とともに流行が違ってきていますね。

グリーンのプリーツのスカートの上にもうひとつスカートを重ね

さらに黒のレースのチュニックを重ねて、立体感を出しています。

ウエストに巻いたリボンの垂れ下がった端にはスカートの裾と同じ装飾が施されて

統一感があって素敵です。








こちらの本は文化学園創立60周年記念にあたり刊行された

『ファッション・プレート全集』
LE7



17〜18世紀のバロック・ロココ時代から 20世紀のアール・ヌーボ アール・デコの時代まで 

西洋の各時代の当時のファッション紙から抜粋されたファッション画の図鑑で

全部で5巻刊行されました。

LE12
(第1巻バロック/ロココより)


LE11
(第2巻19世紀初期より)


LE10

(第3巻19世紀中期より)
 

LE8

(第4巻19世紀後期より)

LE13
(第5巻20世紀初期より) 

 

この本をペラペラめくりながら、

当時の豪華なドレスと人々の暮らしぶりに思いを馳せながら

秋の夜長を過ごしています。



価値観の違う人にとっては古ぼけてシミのついたイラストでも

私にとっては大事な宝物。 

紙物コレクションは無駄使いかなぁ......とは思いながらも、

時々プチ贅沢気分を味わっています。



アンティークの魅力に気付かせてくれた

駅近くのアンティークショップ。

高校を卒業して以来、駅に降り立ったことはないけれど

今でもあのお店あるのかなぁ........

 

この他のファッション画は

また別の機会にご紹介しますね。