企業は過剰な在庫を抱えることになった昭和40年は

高度成長期で唯一の不況の年でした。

そしてその不況のあおりは

みね子達が働く向島電機にまで及んできたのです。


工場にいられなくなったみね子たちは

それぞれ別の就職先をみつけて歩み出すことになりました。



工場稼働の最後の日

工場の設備や備品を引き取りに来た業者が仕事を始めようとした矢先、

誰よりも頭が良くてしっかりしていた豊子の心の糸が切れました。

なんと工場の作業場の鍵を全部閉めて

中に立てこもってしまったのです。




やだ.....やだ、絶対やだ!

やだ....やだ...やだ。

やだ....やだ...。やだ....。

絶対やだ〜〜!」

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「豊子どうしたの?開げで!」

「豊子。どうしたの?あんた。」

「豊子、お願い、開けて。」


「豊子、どうしたの? こんなごとしたって......。」


仲間達が心配そうに、工場の窓から豊子に呼びかけます。

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「わがってる。わがってる。こんなことしたって、

何にもならねぇってのはわがってる。

わがってるんじゃ!

しゃべりたいんだよ。嫌だってしゃべりたいんだよ。

誰にがはわかんねぇけど、おれは嫌だ。

みんなと一緒に働きてぇ。

ここはおらが本当の自分でいられる所なんだ。

今までそったな所はねえ。

だからこの工場で、乙女寮で、仲間たちで、

一緒に笑って、一緒に泣いて....。一緒に悩んでくれて.....

そんなの初めてだったんだ.....。初めてだったのに.....。

なして、なして、みんなと一緒にいちゃいげねえの?

なしてここで働いではいげねえの? なして?



今までどんな辛い境遇に置かれても

ずっと我慢し続けて『良い子』でいた豊子が

初めて自らの運命に抵抗をしました。

工場が閉鎖するのは嫌だという気持ちは

ここで働いている仲間達だって、みんなも同じ気持ちのはずなのに

何でそんなにみんなは物わかりがいいの?

それはね、嫌だと言ったって、自分たちはただの使われの身。

自分たちではどうすることもできないし、

松下さんや愛子さんを困らせることになる。

みんなはそれを知っていたから

何にも言わないで素直に事実を受け止めたんだよ、豊子。


誰よりも勉強が出来てしっかりしていた豊子だけど

本当はまだまだ子供だったんですね。

そして子供だからこそ、

みんなの気持ちを遠慮なく代弁できたのでしょうね。



泣きながら工場に立てこもる豊子。

泣きながら心配そうに見守る仲間達。

工場を取り壊そうとする業者に頭を下げて

あの子の気持ちもわかって欲しい。

納得して自分から出てくるまで

もうちょっと待ってあげてと頼む松下さん。



みね子は言います。

「豊子、私だって嫌だよ。

大好きだったから。そこが。

自分の席にすわって、仕事すんのが大好きだった。

最初は全然できなかったけれど。

でも頑張って、負けなかった場所だからさ。

でもね、豊子。

悲しいけど、なぐなんないよ。

なぐなんない。私達がずっと忘れないでいれば

工場はなぐなんない。ずっと。

ずっとなぐなったりしないよ。そうでしょ?豊子。

それにさ、私たち決めたでしょ?

最後まで笑っていようって。

それが私達らしいねって。約束したでしょ?

違う?豊子。」



みね子のそんな言葉に

ついに豊子が自分から作業場の扉の鍵を開けました。

真っ先に豊子に駆け寄ったのは

いつもいがみ合っていた澄子でした。

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思えば工場閉鎖の朝から、豊子の様子が変でした。

いつもきびきびと動いていた豊子が、澄子のようにもたもたしていたり

朝食を大口でバクバク食べていたり、

仕事で初めてミスしたり.....

この頃から、自分は『良い子』でいるのはもう嫌だ、

自分の気持ちに偽りなく生きていきたいと思っていたのかも知れません。

今まで我慢して、頑張って、ようやく居心地のいい自分の居場所を見つけたのに

それが音を立てて崩れていく......

まだ中学を卒業したばかりの女の子。

豊子の気持ちを考えると、私までいたたまれない気持ちになりました。



でも、こんな騒動を起こした豊子にかけた

愛子さんの優しくて思いやりのある言葉が心にしみました。


「やれやれ。豊子ちゃんも世話が焼ける子だったんだねぇ。」


この言葉を聞いて豊子はきっと嬉しかったに違いないと思いました。

今まで『良い子』であることを求められて

それに応えようと『嫌だ』と一度も言ったことがなかった豊子が

みんなのように愛子さんにわがまま言ったり、困らせたりできて

ようやく普通の16歳の女の子に戻れたんだもの。

愛子さんの言葉はそれを証明してくれたのです。



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工場が閉鎖され、次々と新しい職場や寮へと旅立っていく仲間たち。

時子は銀座の大きな喫茶店で住み込みの仕事をすることになり

豊子は食品会社への就職が決まり

幸子は雄大先生のいる大きな工場へ......

こうして一人、また一人...と

乙女寮から仲間たちが去って行きました。

澄子とみね子は両国にある石鹸工場へと再就職が決まったのも束の間

年の瀬も迫ったある晩

みね子達が働く予定だった石鹸工場の社長さんから

業績不振で一人しか採用できなくなったと言われ

みね子は澄子に就職口を譲ることになりました。

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年の瀬に失業者となってしまったみね子。

途方に暮れながら向かった先は、あのすずふり亭でした。

みね子にとって、すずふり亭は

お腹を満たしてくれるだけでなく

疲れた心や身体を癒してくれるオアシスのようなものだったんですね。


そしてそのすずふり亭のオーナーである鈴子さんの計らいで

みね子はそこで働けるようになりました。


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すず子さんの「うちで働いてみる?」って言葉に

よっぽど嬉しかったのでしょう。

すぐにカウンターに駆け寄って

このお店で働く宣言をしたみね子。



いがったね、みね子。

ここだったら、もしかしたらお父ちゃんが

ひょっこり顔を出すかも知んないよね。



がらんとなった乙女寮で

愛子さんと二人きりで過ごす大晦日。

知らないアパートで一人で年越しするのも淋しいからと

みね子は愛子さんと二人で年越しゾバを食べながら

紅白歌合戦を見ました。

愛子さんは倍賞千恵子が好きで

みね子は森繁久彌が良かったそうですね。

夏ばっぱ、いやすずふり亭の鈴子さんは

やっぱり橋幸夫でしょうか...
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この1年、いろいろな事があったよね。

ふと、みね子は思います。

愛子さんって、東京のお母さん代わりじゃやっぱしなくて

東京のお姉ちゃんだなって。

お母さんなら言うのにためらってしまうことも

お姉ちゃんならなんとなく相談できます。

私は長女なのでいつもお姉ちゃんが欲しいと思っていました。

あ〜あ〜、愛子さんみたいなお姉ちゃんが欲しかったなぁ......。


愛子さんからの思いがけないプレゼントで

久しぶりに奥茨城の実家へ戻ったみね子は

心も身体もすっかり元気になって

東京へと戻ってきました。

これからすずふり亭のお仕事と、初めての一人暮らしが始まります。


次回へと続く.....



ドラマはもうとっくに終ってしまったので

お人形版ひよっこは、ここからはさっと流す程度にしようとしたのですが

せっかく前半あれだけセット作りを頑張ったんだから

後半もできるだけ頑張ってみようと思って

今、すずふり亭の内装を作っています。

仕事の合間の作業に加え

材料を調達するのに時間がかかってしまい

なかなかトントン拍子に事は運びませんが

ドラマのお話を思い出しながら

セットを作るのがとっても楽しい!

この分だとひよっこ最後のシーンまで

10月中にはとても仕上げられません。

下手したら今年いっぱいかかっちゃうかも?!

そうならないようにがんばっぺ!