こうしてみね子達を乗せた集団就職列車は上野に到着しました。
子供達はそこで、それぞれの就職先へと旅立って行きます。
新しい生活に不安を抱えながら、
引き取り手を待つ子供達........
そんな中、三男の就職先の日本橋の米問屋の主人が
三男を引き取りに来ます。
2人に別れの挨拶をする間もなく、
せっかちな米問屋の主人の後を追いかけて行く三男に
あわてて声をかけるみね子と時子。
「三男! 頑張ろうね!」
「三男!負けんな。 負けたら嫌いになっかんね!」
せっかちな米問屋の主人の後を追いかけて行く三男に
あわてて声をかけるみね子と時子。
「三男! 頑張ろうね!」
「三男!負けんな。 負けたら嫌いになっかんね!」
時子の、負けたら嫌いになっかんね!は
三男にとっては最高のエールになりましたね。
大好きな時子に嫌われるくらいだったら
どんな辛い事でも乗り切らなくっちゃね。
三男が立ち去ったあと、ようやくみね子達の就職先の
向島電機の寮の舎監を担当しているという女性が
引き取り手として現れました。
ところがここで一悶着ありました。
初めて見る大都会の喧騒に不安いっぱいのみね子に
予期せぬ出来事が待ち受けていました。
なんと、みね子の名前だけが登録名簿に載っていないのです。
ショックで座り込むみね子に
時子と澄子が励まします。
「私......働げないのがな?
どうしよう.......。どうなるんだろう、私。
え.....帰んの?このまま?帰れないよ.....。
帰るわげにはいがないよ.....。
うう......いがないよ、帰るわげには......。」
何かの手違いがあったけれど
最終的には無事に就職できるとわかっていましたが
奥茨城の家族のために、そしてお父ちゃんのために
このまま帰るわけにはいかないと
不安に押しつぶれそうなみね子の気持ちを想うと
私までいたたまれなくなってしまいました。
ようやく工場と連絡がつき、名簿に記入漏れの手違いがあったことがわかり
みね子は無事に向島電機へと就職できることになりました。
みね子、時子、澄子、そしてもう一人、
とても優秀なのに、家の事情で高校へ進学できず
中学卒業後すぐに向島電気へと入社することになった
青森から来た兼平豊子の4人が
向島電機の乙女寮の新しいメンバーとして仲間入りをはたしました。
同じ部屋になった寮の先輩ともすぐに打ち解けて
食堂で本格的なカレーライスを食べる乙女寮の新人4人。
うちで作っていたカレーライスとは全然違っていて、
都会的でまさしくプロの味。
ちよ子や進にも食べさせてあげたいなって
なんだか急にうちが恋しくなってきてしまったみね子......。
それと同時に、もう今まで慣れ親しんだ故郷から
自分はこんなに遠く離れてしまったんだと
カレーの味を通して実感したみね子。
きっと食べ終わるころには
しょっぱい味のカレーになってしまったんだろうなって
私までせつなくなってしまいました。
翌朝から、みね子たちは簡単な説明のあと
早速仕事にとりかかります。
朝礼のあと、一斉に唱和された『ご安全に』。
この挨拶、生まれて初めて聞きましたが
製造業や建設業界の現場でごく普通に使われているそうです。
ここ向島電機でのみね子の仕事はと言うと
ベルトコンベアーで流れてきたトランジスタラジオの基盤に
順番に細かい部品を取り付けていくのです。
その工程はなんと全部で80工程。
途中でひとつでもうまく取り付けられなければ
ラジオは鳴りません。
工場長の話をまともに受け、
この高度成長期に日本を背負って立とうと意気込んでいるみね子です。
お父さん.....。
どうやら私、日本を背負っているようで。
お父さん.....。
アイルランドに日本が負けたとしたら
それは私のせいかもしれません....。
アイルランドってどこですか?
相変わらず天然ボケのみね子に笑わされます。
工場の生産目標は1日に340台。
一人が一つの作業を行うのに、平均3.5秒が目標だそうです。
そんな話を聞いたら、不器用を自覚しているみね子は
プレッシャーで余計に萎縮してしまいますよね。
お父さん、3.5秒だそうです。
3秒って言われるだけでも
短いなと思うのに。
テン5って.......
お父さん、アイルランドです.....。
日本の誇りです。
3.5秒です.......。
テン5です......お父さん.......。
突然ブザーがなり、ラインが止まってしまいました。
みね子がミスをしてしまったのです。
次から次へとミスの連発で
不器用な自分がみんなの足手まといになっていると感じるみね子。
頑張らなくちゃと思えば思うほど
その思いは空回りして、さらにミスを誘い
落ち込むばかりです。
でもそんな時、愛子さんは笑顔で言うのです。
大丈夫!そのうちできるようになるから!
でも、自分の不甲斐なさに落ち込んで不器用な自分がみんなの足手まといになっていると感じるみね子。
頑張らなくちゃと思えば思うほど
その思いは空回りして、さらにミスを誘い
落ち込むばかりです。
でもそんな時、愛子さんは笑顔で言うのです。
大丈夫!そのうちできるようになるから!
ささくれているみね子にとって
その励ましの言葉は、素直に心に響いてはくれません。
何の根拠もなく、笑顔で大丈夫って言われると
とどめのように腹がたってしまうようです。
かつてはこの向島電機で働いていた工員で
みね子以上に不器用で、上司にいつも怒鳴られたり
蹴られたりしていたそうです。
そう言われてみれば、
電話の応対中にお茶をこぼしてしまい
その処理を優先してしまい、電話中だったことを忘れてしまったり
大事な雇用者名簿に記入漏れがあるのに気がつかなかったり
駅では別の列車に乗って来た豊子のお迎えを忘れてしまったり......と
おっちょこちょいぶりはみね子以上かも....。
もしかしたらドジなみね子の姿に、
かつての自分を重ねていたのかも知れません。
だからこそ誰よりもみね子の気持ちをわかっていたし
「大丈夫、そのうちできるようになるから」という言葉は
みね子に向けられていただけでなく、
自分にも言い聞かせていたのかも知れないと思いました。
そんな中、ある事件が起きました。
自分だけがミス連発をし、みんなの足を引っ張っていると感じている
みね子の気持ちを楽にしてあげようと、
時子がわざとミスをしてベルトコンベアーを止めたのです。
いつも冷静で的確な仕事をする時子が
みね子のためにわざとミスをしたのだということは
みんなにもわかっていましたが
それを豊子がとがめたのです。
そして、ミスを連発するみね子の性格を指摘し
ダメだしをし始めました。
『豊子。やめなよ。そういうの、腹立つ。
そうやって冷静ぶってさ。
いつでも冷たく言い放つのやめなって言ってんの。
自分は人とは違うって言いたいんでしょ?
そう見られたいんでしょ?
あんた見てっとさ、自分見てるみたいで嫌なんだよ。
イライラしてたんでしょ?
ずっと青森で。
自分はみんなと違うんだ、そう言いたくて仕方がない!
だからいつもトゲのある言い方するしかできない。
私は人とは違うんだって。こんなところで埋もれるのは嫌だって。』
『んなことねぇ!
あんたに、わだしの気持ちなんか........!』
『わがるよ!私もそうだったからね!
でも私はそういうのやめた。
もう東京に来たんだから。
そんなふうにギスギスすんのやめた。
だってそんなごとしなくたってもういいでしょ?
東京に来たんだから。
そんなふうにいぢいぢ冷たいようなこと
言わなくてもいいんだよ!
新しい自分になれんだよ。
素直になりなよ!』
ついに、時子と豊子のケンカが始まります。
貧困の家庭に生まれ
学年1番の成績にもかかわらず、高校へ進学することができなかったことが
豊子の心に深い影を落としていたのです。
そんな自分を惨めに思いたくないから心を閉ざし、
自分は能力のないみんなとは違うんだと強がることで
かろうじて自分を支えていた豊子。
でも、時子の熱い言葉によって
氷のように閉ざされた心が少しずつ開いていきました。
この夜の騒動は今まではお互いにさぐりあっていた同部屋の乙女達が
初めて自分をさらけ出して本音で語り合い
お互いの理解を深めることができた感動的なシーンでした。
(熟睡していた澄子以外....)
まさに雨降って地固まりましたね。
この事がきっかけで
部屋の乙女たちはさらに強い絆で結ばれて行ったのです。
時子の、真正面から人と向き合い
時には優しく、時には厳しく友達を引っ張って行く姿勢は
後に時子がツィッギーコンテストの時のスピーチで言った
『女の子の未来は私に任せて!みんなついてきて!』に通じます。
時子と豊子の涙の抱擁。
どんなに感動的なシーンが繰り広げられているのか
この目で見たいのに、
時子や豊子と一緒に感動したいのに、
自分のために言い争っている時子と豊子に気まずくて
眠ったたフリをして布団から出るに出られないみね子の心の声や
みね子と時子のボケとツッコミ。
そしてこんな騒ぎの中も微動だにせず、熟睡している澄子.....。
泣いたり、笑ったり、しんみりさせられたり.....と
この回のシーンは
数ある「ひよっこ」のシーンの中でも
大好きなシーンのひとつです。
そして、翌朝、同部屋の先輩、幸子が言いました。
「時間がかかってもいい、遅れてもかまわない。
その遅れは仲間たちが取り戻す。
だから仲間を信じて....」
そしてその日、初めてみね子がミスをせずに
一度もベルトコンベアのラインが最後まで止まることなく
一日を終えることが出来たのです。
みんなへの信頼感に安心感が加わったことで
今までの不安や焦りが払拭され
平常心で作業ができるようになったからだと思います。
初めてもらったお給料袋を手に
売店で売っている可愛いお洋服に胸躍らせるみね子。
でもお給料のほとんどを実家に仕送りするために
買いたいものを我慢しなくてはなりません。
そんなことわかっているけれど
買いたかったけどあきらめた洋服を
何のためらいもなく買っていく同僚を見て
悲しくなってしまいます。
そんなみね子の気持ちを誰よりもわかっている時子たちは
そっとみね子を気遣います。
そんな中、みね子に思いがけず小包が届きました。
そこには、仕送りするみね子へのねぎらいと
お母ちゃんの手作りのブラウスが入っていました。
忙しい仕事の合間を縫って作ってくれた
お母ちゃんのブラウスは
売店で売っているどんな高価なお洋服よりも素敵なものに
見えたことでしょう。
お給料のほとんどを仕送りするみね子のことを
お母ちゃんはいつも心配しているのですね。
お母ちゃんの愛情が嬉しくて涙するみね子を
後ろでそっと見ていた仲間達。
まるで自分のことのように仲間を心配し
共に笑い、共に泣きくことのできる
素晴らしい仲間を得て
みね子は自分の置かれた状況下の中で
一生懸命頑張ろうと思うのです。
話は変りますが、奥茨城にあるというみね子の実家。
奥茨城とは架空の地名で
ロケのあった場所は高萩市というところだそうです。
人が実際に住んでおられるそうなので
詳しい住所は明らかにされてはいませんが
google mapの航空写真を高萩市にセットして
空からついに見つけることが出来ました。
そこで8月の某日に、みね子の実家の近くまで
ドライブに行きました。
山奥ということもあって、車1台しか通れないような狭い道を
対向車がこないことを祈りながら走り続け
見慣れた橋を渡ると.......ありました!
みね子の実家が........。
お母ちゃん、じいちゃん、
みね子だよ!
実際にこの家に住んでおられる方がいらっしゃるので
遠くからの撮影にしましたが
この赤い屋根の家から、今にもちよ子や進が飛び出してきそうです。
じいちゃんは、前の畑で野良仕事してるかな?
我が家のみね子も、奥茨城の実家に里帰りできて大満足の1日でした。
この記事を書いている途中で
『ひよっこ』は最終回を終えました。
今は、みね子達の余韻に浸りながら
『お人形でひよっこをやってみた』を展開して行ってます。
様々なシーンの中で、私はこの向島電機/乙女寮のエピソードが
一番好きでした。
次回、もうちょっとこの続きを撮影しながら
最終章のすずふり亭のエピソードまで
駆け足でやっていきたいと思います。
時間的なこともあって、
すずふり亭のエピソードは、今までに比べると
さっと流すだけになってしまうと思いますが
もうしばらく、おつきあいいただけると嬉しいです。